AI活用のコツ:LLMの仕組みと最適化戦略

この記事は、ChatGPTなどの生成AI(人工知能)を仕事や生活で最大限に活用するための実践的なコツを、AIの基本的な仕組みと併せてご紹介します。AIは使い方次第でその能力が大きく変わりますが、ここで紹介する二つのコツを理解すれば、誰でも今日からAIの能力を引き出し、効率的に作業を進められるようになるでしょう。

目次

AIの頭脳「LLM」の正体:記憶力ゼロの天才

多くの対話型AIの頭脳として使われているのが、LLM(大規模言語モデル)と呼ばれる技術です。LLMは、私たちが入力した指示(インプット)に対して、最も適切な返答(アウトプット)を返す役割を担っています。

LLMの仕組みを簡単に表すと、「思いつきで話す記憶力ゼロの天才」と例えられます。

まず「思いつきで話す」という点について、AIは人間のように話の内容を深く理解しているわけではありません。実際には、入力された文章の次にくる言葉として最も確率の高い言葉を、非常に高い精度で予測して選び出しているのです。この予測の際、LLMは直前の言葉だけでなく、入力された文章全体の文脈を参考にできるため、状況に合った自然な回答が可能です(「空気を読める」)。

次に「記憶力ゼロ」という点について、LLM自体には、人間のような会話を記憶する機能はありません。私たちがチャットで文章を送るたびに、AIはそれまでのすべてのやり取りを毎回一瞬で読み込み、「あたかも覚えているかのように」次の言葉を予測しています。ただし、一度に読み込める情報量(コンテキストウィンドウ)には上限があり、これをAIの「思考のキャパ」と呼ぶことができます。

AI活用術その1:複雑な作業は計画立案から始めよう

AIに複雑なタスクを依頼する際、いきなり全てを丸投げするのではなく、まずは作業計画だけを立てさせることが有効です。

AIは、一度にたくさんの指示を与えられると、その思考のキャパの限界により、重要な情報を見落としやすくなります。これは、人間が大きなプロジェクトに取り組む際に、まず計画を立ててから実行に移すのと理屈は同じです。

例えば、「1週間の旅行の計画を立てて、最適なホテルとアクティビティを提案してほしい」という複雑な指示をしたい場合を考えてみましょう。

この場合、いきなり詳細な計画を要求するのではなく、まずは「旅行の計画をどのように進めるのが良いか、その作業ステップ(手順)だけを提案してください」と指示します。

計画が提示されたら、内容を確認し、不要なステップ(例:現地ガイドのリストアップなど)を削除するなど、計画の時点で修正を行います。こうして納得できる計画ができた後に、「この修正した計画に従って、具体的な作業を進めてください」と指示を出すことで、AIは一つのステップに集中し、質の高いアウトプットを出すことができるのです。

AI活用術その2:修正指示を重ねるより最初の指示を練り直す

AIから返ってきた回答が期待と異なるとき、チャットを続けて「違う、そうじゃない」と修正指示を重ねるよりも、最初の指示(プロンプト)をより的確なものに改善して、最初から指示し直す方が賢明です。

修正のやり取りを重ねることは、AIとの対話履歴に矛盾した指示や不要な情報といった「ノイズ」を溜め込むことにつながります。AIは毎回、過去のやり取りを全て読み込むため、ノイズが多い文脈の中では、重要な指示が埋もれてしまったり、矛盾した指示に混乱してしまったりするからです。

例えば、「新しい社内ポリシーの草案を作成してほしい」とAIに依頼したとします。

もし出てきた文章が「専門用語が多くて堅苦しい」と感じた場合、「もっとフレンドリーに直して」と指示を出すと、今度は逆に「馴れ馴れしすぎる」文章が出てくるなど、出力が悪くなる可能性があります。

この場合、修正指示を繰り返すのではなく、最初の曖昧だった指示を次のように具体的に修正します。「専門用語を避けつつも、従業員に安心感を与える信頼できる口調で、新しい社内ポリシーの草案を作成してください」。このように具体的で明確な指示を与えることで、一発で求めている適切なトーンの文章を引き出すことができます。

AIの仕組み、すなわち「記憶力ゼロの天才」という特性を理解し、この二つのコツ(計画立案と指示の練り直し)を実践することが、AIの能力を最大限に引き出すための重要な鍵となります。

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